合格実績
<合格実績の落とし穴……>
合格実績は、過大評価してはいけません。大手の進学塾やチェーン塾の合格実績は、その人数の多さに驚かされるが、生徒が多ければ合格者が多くて当たり前。ひどい場合には提携している他の塾と合算して合格実績をアピールしていることもあるので要注意です。ひとつの教室あたりでどのくらい合格しているのかは、なかなか分からないものです。そもそも、合格者数よりも合格率が問題なのですが、これは普通はチラシには書いてありません。そのため、授業のレベルが合っているかどうかを知るために、通おうとしている教室から志望校と同レベルの学校への合格者が出ているかどうかを見る程度にとどめておいた方がいいです。
このように考えると、1~3教室位の規模の塾の「合格実績」は信じるに値するものであるかのように思われますが、そこにも落とし穴があります。母集団が少人数であるため、年度ごとに生徒の成績・在籍中学校・志望に偏りが生じます(少人数の生徒を対象にしているため致し方のないことです)。そのため、例えば前年度の合格実績だけでは、その塾の指導能力を測定することが不可能なのです。
大手塾の指導はある程度マニュアル化されている(そのための独自テキスト、統一カリキュラム・社内研修)ため、講師個人の能力の大小が直接には授業に反映されません(講師の能力に対する依存度が低い)。一方、ほとんどの中小塾は、大手塾とは対局で、授業は講師の能力にのみ依存しています。ところが、「合格実績」の中には、講師の異動や退職のため、現在教えていない講師(その講師が特に優秀だったりする)による実績もそのまま含まれています。そして、なかには8割以上の講師が他塾に移ってしまったにもかかわらず、恥ずかしげもなく過去の栄光をかざして生徒募集をしている塾もあります。
このように見てきますと、結局、塾の「合格実績」を鵜呑みにしてはいけないことが、お解りいただけると思います。では、どこに注意してどのように「読む」のか、以下に箇条書きで記します。
◆大手塾の合格実績の「読み方」
・卒業者の人数が記されていたら、合格者数を卒業者数で割って、パーセンテージを出す。
・教室数がわかれば、合格者数を教室数で割って、1教室あたりの合格実績に置き換える。
・合格者名簿が入手できるなら、重複合格を調べる。→1人の生徒が5校位実績を稼いでいる場合も多い。
・卒業した学校名がわかるなら、当該教室の卒業生の進路が推測できる。
・入塾テスト実施していて、希望者全員入塾生でない場合は、実績が良くて当然である。
・実績が、難関上位校や中堅校位までしか記載されていなかったら、それ以下の高校に進学する生徒は、 その塾にとって、授業料を毎月払ってくれる大切な「お客様」で、「生徒」ではない。
・根拠のない合格者の水増は、見破れないことを、頭の片隅に。
◆中小塾の合格実績の「読み方」
・中小塾の合格者数自体は、誤魔化しが利かないから信用しても良い。
・前年度実績を、単年度で掲載していない場合(「過去○○年度分」などの記載)前年度は実績が悪かったと考える。→ 在籍生徒の偏りが原因の場合もあるが、優秀な講師が辞めた可能性も高い。
・記載年度の講師が現在も在籍し、講義をしているのか、情報を集める必要がある。
・前年度分だけでなく、過去数年間の累計が表示してある塾なら安心だ。→「大手塾との比較・受験傾向の検討」を してもあるために塾は記載している。
・所謂「難関上位校」合格者数が過去5年に複数(できれば2桁)あれば、指導能力に問題はない。
・中堅校以下の記載をしていない塾は、大手と同じように「お客様」扱いかも。
・合格校がバラエティーに富んでいれば、進路指導が行き届いている証拠だ。→進学校の研究をしない塾は、偏差値による パターン通りの進路指導しか行えない。
<合格実績=成績UPが成り立たない理由>
「合格」という言葉は縁起のいいものです。そして,塾の指導方針やカリキュラムなんかより,数字として現れる合格実績の方が「わかりやすい」のも確かです。 なので合格実績を見て入塾した生徒もたくさんいると思います。優秀な子が周囲にいっぱいいれば何らかのよい刺激を受けられるだろう、いい学校に受かる子が多ければ,それだけ塾に合格のノウハウも蓄積されているだろうと考えながら・・・。
しかし残念なことに,これらの「もくろみ」は,多くの場合見事に裏切られます。
第一に,常識的に考えれば至極当然なのですが,普通,クラス分けによって,できる生徒とそうでない生徒は慎重に,かつ厳格に切り離されます。そして,東大など一流校に受かると言っても,上位クラスの人ばかりです。最後まで優秀生の集まるクラスに入れなかった生徒は,ほとんど希望のないまま入試に突入してしまいます。この意味で,上位クラスと下位クラスは,全く別の塾である(多くの場合担当講師も別)と考えた方がよいかもしれません。
そこで,中高一貫校や公立の進学校に通う人なら,できる子から刺激を受けるためには,塾よりもむしろ,能力別クラス編成のない高校の方がよほど条件がよい,ということになってしまいます。
第二に,既に合格が見えているような「できる子」に対する指導ノウハウは,これからがんばろうという人に対するノウハウとは全く異なります。ご家庭で子供の勉強を見てあげた経験のある親御さんや、家庭教師の経験のある人なら、学力を引き上げるのがいかに難しいか、ということを痛感しているはずです。
多くの受験生にとって大事なのは,「はじめから合格しそうな子を囲って合格させる」ことではなく,「未だ合格ラインに達していない生徒を合格ラインにまで引き上げる」ことであるのは明白です。
第三に,「合格に関する数字」については、算出根拠が明示されていないものは,ほとんど意味がないということです。どの学年に,どのくらいの期間在籍したかが重要です。では,在籍した期間や時期が記してあれば信用できるかというとそうでもありません。数字は所詮数字です。本当か嘘かはわかりません。
このように考えてくると、過激な言い方になりますが、数字それ自体にはほとんど説得力がないということになります。
では,何が信用できるのでしょうか。
まず,算出根拠に加えて,実名の裏づけが必要です。全合格者の実名と高校名を塾・予備校内に掲示できる場合に限り,その数字が吟味の対象たり得るのです。なぜなら実名を公表すれば、たとえば同じ高校の後輩が先輩に直接話を聞くということもできるからです。
次に、合格者数の横に不合格者数または母集団の規模が併記されているか、あるいは合格率が明示されていなければなりません。ただし、ここでも注意が必要です。母集団と合格者の抽出条件が異なっていることがあるからです。つまり,母集団は現時点の在籍者数なのに、合格数はかつて一度でも入塾した人を全てカウントしているおそれがあります。よくよく疑ってみるべきです。
たとえば仮に,「10月現在高3生の在籍者100名,東大合格者70名」という表示があったとすると,これは合格率70%を意味しません。合格者の中には中1や中2のときにごく短期間だけ在籍していた人も算入している可能性があるからです。一方で、辞めた人も含めた「真の在籍者」は膨大な数に上る可能性があります。「回転数」が問題なのです。派手な広告を打っているところは,この「回転数」が莫大になりますので、「全受講生に対する合格率」は信じられないほど低い数字になります。
<予備校の未履修問題 >
大手予備校が発表している東大合格者数を全てたしてみます。A予備校は900人合格、B予備校は1000人合格、というように各予備校が発表している合格実績をすべてたすのです。すると、なんと東大合格者数を越えてしまいます。なぜこのようなことが起きるのでしょうか?東大の2006年の合格者数は全学部前期後期を合わせて3124名。しかし、各予備校が発表している合格実績を合計するとこの数よりも大きくなるのです。
大手予備校に通っていない生徒もいるはずです。独学で東大に受かった生徒もいるはずです。それなのになぜこのような現象が起きるのか。原因は簡単です。その予備校で授業を受けていない生徒も合格実績にカウントされているからです。いわば、予備校版未履修問題だと私は思います。
最近、公立高校が受験のために教育委員会に「授業を実施した」という虚偽の報告をしていたことが問題になりましたが、予備校も東大合格者の生徒に対して「うちの予備校が授業をした」という虚偽の報告をしているわけです。
このような現象はなぜ起きるか。各予備校が合格実績を競うあまり、通常授業をうけていない生徒でも、少しでも自分たちとかかわりのある生徒を自分たちの生徒ということにしてしまうからです。授業は受けていなくても、会員になると模試が割引になる制度があります。その会員になっただけで、その予備校の実績にされてしまうことがあります。また、講習講座のような短期的な授業に1回でもでただけでカウントされることもあります。とにかく、なにかしら自分たちの予備校にかかわりがあると実績としてカウントされるのです。そのため、1人の東大合格者が複数の予備校の合格者として名前が載り、実際の数よりも大きくなるのです。
では、この実際の合格者数を超えてしまっているという事実からわかることは何でしょうか。ここからわかることは、予備校の実際の合格実績というものは、わからないということです。
模試会員でも合格実績になる。短期的な授業を受けただけでも合格実績となる。また、予備校は成績のいい生徒をただで通わせています。もとから成績のいい生徒をタダで通わせておいて受からせても合格実績となるのです。
私のイメージの合格実績とは「この予備校のおかげで合格したという生徒の数」です。しかし、予備校が発表している合格実績は「自分たちの予備校に少しでも関わってくれた合格者の数」のようです。そして、その関わった生徒を増やすために、自分たちの予備校の模試の成績上位者には学費優待のお手紙をだします。進学校の生徒には校門の前で優待の手紙を配ります。少しでも合格者と関わりをもつために。実際に成績が悪い状態で予備校に入り、予備校の授業で偏差値が伸び、その予備校のおかげで合格できたという生徒はどの程度いるのでしょうか・・・。
◆合格実績を宣伝に使いたい
合格実績をつくれば、広告に使えます。「東大○○人合格」と書けば、この予備校に通えば受かるような気がします。生徒も予備校の良し悪しを判断する際、合格実績を最重要視するひとも多いと思います。だからこそ各予備校は実績を大々的に書きたいために、あらゆる手を使って実績を大きく見せようとします。しかし、その合格実績はみなさんの思っている合格実績ではない可能性が高いです。
◆無料でうからせ、有料の生徒を集める
言い過ぎかもしれませんが、予備校のやっていることは「成績のいい生徒を無料で受からせ、広告を打ち、お金を払う生徒を集める」ということではないでしょうか。模試をうけ成績上位者になると図書カードと学費の優待券が届きます。入塾テストをうけ、成績がとてもいい生徒は無料になり、そこそこいい生徒は割引され、成績がよくない生徒は全額学費を払うのです。
ここまで読んで誰もが合格実績なんて信用できないとおわかりになるでしょう。合格実績の高い塾にはいる=自分も合格する・成績があがるといった方程式が成り立たないのもこのためです。
<合格実績のどこを見ればよいのか>
入試期間が終わり、各塾の合格実績が出揃ってきています。
最近、週刊誌のネタとしては、「お受験」が最上位に上がっているようで、塾の合格実績の比較などもよくなされています。
その背景として塾選びをする際の一つのファクターとして、合格実績というものが大きなウェイトを占めていることもあげられます。
合格実績の比較というと、「合格者数」の比較というのが一般的ですが、これはあまり意味のないことです。
理由はいくつかありますが、
①母集団が違うのに「合格者数」を比べても仕方ない。大手の方が合格者数が多いのは当然。
→本来「合格率」を出すべきだが、ほとんどの塾で不合格者数は発表していないので、
現実にはなかなか比較が難しい。
②同じ大手で比較するとしても、元々トップ校を目指すつもりで入塾させることが多い塾と、そうでない塾とを比較しても、前者の方が「合格者数」が多いのは当然なので、比較しても意味はない。
などが主たるところでしょうか。
ですから、「合格者数」に注目したところでその塾の実力を示すとはいえないでしょう。
なお、小規模の塾では、「第1志望校合格率」や単なる「合格率」などを掲げているところもありますが、これらの数字は、第1志望校のレベルを下げてしまえば上がる(あるいは、確実な併願先を設定すれば上がる)ものなので、これもあまり参考にならない数字です。
では、何が参考になるのか。
私が考えるのは、「最近数年間の合格者数の推移」です。
せっかく通わせるなら活気のある塾、伸びている塾に通わせたいものです。合格実績が伸びている塾というのは、それだけ力を伸ばしている塾だといえるでしょう。
単に、母集団となる生徒数が増えているだけ、という見方もできますが、それはそれで、生徒が集まる塾になっていることを示すことになり、悪い意味にはならないように思います。
「合格者数」を見るのは結構ですが、1年間だけ見ても意味がない。前年との比較だけでもあまり意味はない。数年間を見て、全体的な傾向として増加傾向にあるのかどうかを把握してはじめて「合格者数」は意味を持つと思うのです。